数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ

「もっとも親切な者が生き残る」とは

盛岡中央高等学校附属中学校 一年生


僕は動物が大好きなので、動物が登場する番組などをよくチェックして見ています。 夏休みの宿題のため課題図書を探しに本屋へ行った時も、迷うことなくこの本を選びました。 そして、動物たちの意外で不思議な行動や能力をあらわす沢山のエピソードと共に、それに裏付けされる証拠がしっかり載っていたのも魅力でもありました。

この本では、同じ仕事をしたにもかかわらず その報酬が不平等であることに対して かんしゃくを起こすオマキザルや、形容詞、名詞、副詞、動詞などの品詞を使い分けて高度な会話ができるプレーリードッグなど、動物たちが想像以上に賢いことに驚かされてばかりでした。 数あるエピソードの中で、最も僕が印象深かったのは、六章の種を超えて心を通わせるカラスの話でした。

その話の中でカラスは、街をうろついている子猫を上空から見守り、毛虫や昆虫などのエサを与え、毛づくろいをし、車の往来が激しい道路では子猫の安全を見守ったというのです。 これはまぎれもなく共感と利他行動であり、自分と全く違う生き物だったらどんな気がするのかを考えて、その上、その生き物にどんな手助けが必要なのかを想像しなければならないのです。 しかし、子猫を助けてもカラスには何の報酬や恩恵もないのだから、誰かのためになりたいという気持ちを持っているとしか考えられません。

いま世界では、ミャンマーでのロヒンギャ族への迫害が大きな問題となっています。 同じ国民でありながらミャンマー政府軍がロヒンギャ族の住む村々への焼き討ちや襲撃、大量虐殺などを起こしたので、ロヒンギャ族は隣国のバングラデシュなどに逃避するしかありませんでした。

ロヒンギャ問題が起きたとき、僕はマレーシアのインターナショナルスクールに通っていました。 そこで、総合学習の一環として難民であるロヒンギャ族の子供たちと交流する機会があり、僕は自宅から寄付したい本やお菓子を持って行きました。 交流会では一緒に工作したり、鬼ごっこなどをして楽しく過ごしたのですが、なんだかロヒンギャの子供たちの笑顔が少なかったような気がして、悲しい気持ちになったのを覚えています。

紛争や迫害などの人道的な問題は、子供が一番の犠牲になっているのではないかと思いました。 なぜなら、笑顔の消えた子供は、本当の子供の姿ではないと思うからです。 どうして人間は同じ種であるのにも関わらず民族浄化しようとするのでしょうか。 動物でさえ種を超えて相手を思いやる共感力や利他行動を持ち合わせているのに。 私たち人間は、この地球上で一番高等な生き物だと思っています。 しかし、それは本当なのでしょうか。

実際、私たちは動物から学ぶべきことが沢山あるのではないかと思いました。 動物は、他者を思いやることによって種を絶やすことなく地球上に生き残ってきたのだとすれば、紛争や民族浄化をしようとしている人間は滅びゆく運命にあるのかもしれません。 作者の「もっとも親切な者が生き残る」という一文がそれを表していると思います。

そのためにも、僕たちができることは、まず相手に関心を持つことだと思います。 現代社会では、面倒な問題に巻き込まれたくないという理由から、周囲の物や人に無関心な人が多いような気がするのです。 無関心からは、相手を思いやる共感力も助けるという行動も生まれません。 そして、人は人間にだけではなく動物にも関心の目を向けるべきだと思います。 もし種を超えて垣根なく他者に関心を持ち、思いやることができたなら、人間は動物と共存可能な社会を作ることができると思います。

原文の作成日(推定): 2019年12月




Webページへ編集した者より

ウェブ検索をしていた時に、紙の原稿用紙をスキャンした1枚のPDFファイルが目に()まりました。それがこの作文との出会いです。

「素敵な文章だなぁ」と感じて興味が()いたので、どこかのWebページに載ってないか調べてみたところ、まだテキストデータにはされていませんでした。なので、もっと多くの人へ読んでもらいたいと思い このページを作成しました。

本文に書き間違いと思われる箇所が3点あったので、上の文では訂正してあります。(1.サーフィンするヤギ → サーフィンするヤギ 2.僕 → 僕が 3.想しなければ → 想像しなければ)




資料


Inside Animal Hearts and Minds: Bears That Count, Goats That Surf, and Other True Stories of Animal Intelligence and Emotion 数をかぞえるクマ サーフィンするヤギ
動物の知性と感情をめぐる驚くべき物語


ベリンダ・レシオ (著) 中尾 ゆかり (翻訳)

発売日: 2017.12.23ISBN: 978-4140817292


読書感想文の原稿 (PDFファイル)

元ページのURL https://www.iwate-np.co.jp/page/content/media/2019/12/j-abe-oh.pdf
アーカイブURL https://web.archive.org/web/20221120233136/https://www.iwate-np.co.jp/page/content/media/2019/12/j-abe-oh.pdf





First upload 2021.10.28