時代のカルテ

命の現場





2009年9月21日 放送

VOL.1 ショーケースの子犬はどんな夢を見るか

深夜眠れぬ子犬たち 乳離れして間もない赤ちゃんのような子犬や子猫が人気の中心となっている、日本のペットブーム。 実は動物生態学の視点からみると、極めて問題のあることは、あまり知られていません。 そして、安易な飼い主によって捨てられる犬や猫は、年間30万頭を越えています。 人間の欲望によって、深刻な危機に直面している小さな命の現場を滝川キャスターが取材しました。

子犬たちの様子に、行き交う人々が足を止める 午前0時過ぎ、都内の飲食店が立ち並ぶ通りのなかで、 まばゆいばかりの照明がついた、一軒のショップ。 そのショーケースには、まだあどけない子犬と子猫たちがいました。 ここ数年、増加している深夜営業のペットショップは、 午前2時から3時まで店を開けて、 生後一ヵ月あまりの子犬や子猫などが売られています。

真夜中のペットショップには、ひっきりなしに客が訪れ、 深夜であっても、子犬や子猫はたびたびショーケースから取り出されて、 客の手に抱かれます。 しつこく遊びを仕掛けたり、ショーウィンドーのケースをたたいて、 眠っている子犬を起こそうとする、酔っ払いの客も少なくありません。

午前0時を過ぎ、眠れずに過ごす子犬 ニュースジャパンの調査では、深夜営業のペットショップは、 東京都内だけで、少なくても9店舗。(※午前0時以降に営業) 真夜中の光と騒音に長時間さらされて、 子犬たちは、いつも疲れているようにも見えます。 現在の動物愛護法は、幼い時期の販売規制や、 ペットショップの営業時間に、明確な数値を示していません。 その結果、競い合うように深夜営業の店が乱立しているのです。

「夜のお仕事をされてる方たちがお客さんに多かったです。 ぬいぐるみのようにワンちゃんを買っていかれたりするんですよね、 同伴の男性の方が買ってあげるよという感じで」
(深夜営業のペットショップ・元従業員)

深夜営業のペットショップでは、子犬や子猫が、ブランドバックと同様、 単なる商品として扱われていた、といいます。 「生き物が生き物じゃなく見えてくるんですよね、モノという感じで。 仕入れ自体はオークションから来ているものですので、非常に原価は安いですね。 それを高い値段で流行りに乗せて売るんです」
(深夜営業のペットショップ・元従業員)

行動と中枢神経の関係を研究する菊水准教授 ペットの行動と、中枢神経の関係を研究している、麻布大学の菊水健史准教授は、 深夜営業は動物の生態学的にみて影響が大きいと指摘します。

「発達期の動物というのは夜暗い時間に寝ると、 その間に成長ホルモンというのが血中に分泌されるんです。 体の発達だけじゃなく、脳の発達も、おそらく何らかの障害を受ける」
(菊水健史准教授/麻布大・伴侶動物学研究室)

菊水准教授によると、深夜遅くまでペットショップ店内の強い光がダイレクトに子犬の脳を刺激して、 生活パターンが破壊、成犬になっても障害が残る可能性があるそうです。

滝川キャスター
「生後4,5週で売るペットショップが存在するんですけれど、その影響は?」

菊水健史准教授
「極端に怖がりになるとか、攻撃的になるとか、次の新しい環境になかなか馴染めないという犬が出来てしまう。ストレスに過敏になってしまって、免疫機能もすごく崩されるので、生後8週までは、一緒にいるべき」 

可愛らしさで購買欲を誘うため、生後8週に満たず販売される子犬たち。 それゆえ、問題行動を起こしたり、病気にかかりやすくなる可能性があったのです。

欧米では高い意識を持ってブリーダー業を営む
〜『イギリス』〜
欧米の中でも、動物愛護の精神が強い、イギリス。 ペットショップで犬を売ることは、法律で禁じられているため、 犬を飼おうとする人は、ブリーダーや犬の保護施設に行きます。

ロンドン郊外で、ワイマラナー犬のブリーダーをしている、バッツィー・ホリングスさんは、 日本では、生後一ヶ月あまりで子犬が販売されていると聞き、怒りと驚きをあらわにしました。

「どうして、育て上げた子犬たちを、そんなに早く売ってしまうのか、私には理解できません。 一生を通じて精神的に影響を及ぼすことになるでしょう。生後8週までは、一緒に生まれた仲間の 精神的な刺激が必要だからです」

イギリスでは、子犬の将来を考え、法律によって、 生後8週(約2ヶ月)に満たない段階での販売を禁止しています。 実は、日本でも2005年の法改正の時に環境省が、 生後8週未満の販売規制を検討しましたが、ペット業界の反発などから断念していました。

ケース越しに命の値踏みをされる子犬たち 「非常にその子犬とか子猫に対する需要が高いとか、 ペットの流通業界が対応できるかということで、見送ったと。 規制をかけるって言うことは、やっぱり、”権利”を奪うわけですよね、ある意味」
(環境省動物愛護管理室・安田直人室長)

対談風景
業界の利益を優先させて、小さな命の未来を犠牲にした、国の判断。 なぜ、子犬は商品として扱われるのか、 その答えは私たち自身のなかにあるのかもしれません。



2009年9月21日 放送

VOL.2 子犬が産まれる場所

健康維持のためにプードルの毛を刈る 長崎県で600坪の敷地を使い、 プードルを中心に繁殖しているブリーダーの加藤伸吾さん。 健康を維持するため、朝晩2回、必ず太陽の下で運動させ、 夏場は暑さをしのぐために毛を刈っています。

犬達が自由に走り回ることのできる運動場
「うちはですね、年に一回ずつしか産ませないんです。 年間に2回産ませると、やはり子犬が弱くなります」
(加藤伸吾さん)

責任を持って最後まで飼い続けてもらうため、 加藤さんは子犬をセリに出さず、 契約しているペットショップや飼い主に直接、販売しているといいます。

滝川キャスター
「子供を産めなくなったような子達はどうしているんですか?」

加藤伸吾さん
「里親を募集したり、なるべく一般の方に飼ってもらえるようにしています。 それでも見つからない場合は、最後まで面倒を見ます」

糞尿と悪臭に満ちた不衛生な犬舎 このように、管理が徹底しているブリーダーの一方で、 問題の大きいブリーダーもまた存在します。 関東地方の、あるブリーダー施設では、プードルやミニチュアダックスなど、 ペットショップで人気の小型犬、およそ100頭を飼育。 しかしその実情は、糞や尿が放置されたケージの中で ひたすら繁殖だけを目的とした、通称『パピー・ミル』と呼ばれる状態でした。

「モノ(犬)を大事にしていないと、こういう汚いところ見せると怒られちゃうわ」
(関東地方のブリーダー)

動物愛護団体のメンバー・松本卓子さんは、 周辺住民から「悪臭がする」と苦情が出たこのブリーダーを、仲間と訪問。 その時の様子をこう話します。

「腐った臭いフードと糞尿の臭いが充満している感じでした。 気持ちの悪くなったボランティアもいました」
(動物愛護団体メンバー・松本貞子さん)

腐敗したまま放置されたドッグフードと水 ブリーダーは、ドッグフードに水を加えて、一日に一回だけ与えていましたが、 30度を超す暑さの中で、完全に腐敗していました。 手抜きなのか、ケージの給水ボトルは全く使用していません。

「とにかく水がないって言うのは、一番辛いと思う」(動物愛護団体スタッフ)
「それはね、いわゆる繁殖用だから」(関東地方のブリーダー)
「繁殖用だって言ったって、これは酷いよ。虐待だよ、虐待!」(動物愛護団体スタッフ)

ケージの間に挟まり、足先を失った子犬 さらに、松本さんたちを驚かせたのは、犬たちの健康状態でした。 異様に伸びきった爪は、ケージに閉じ込められたまま、運動も手入れもされていないせいでしょうか。 片目が潰れたまま放置されたチワワの子供、さらに足先が欠損している子犬もいます。

「ケージの柵に足を引っ掛けて、骨折とか壊死して欠損したと思うんです。 ぷっつり取れている子もいれば、ぶら下がっている子もいました」
(動物愛護団体のメンバー・松本貞子さん)

犬や猫の保護活動をする松本卓子さん
大半の犬が皮膚病など、何らかの疾患を抱えていたことから、 松本さんたちは状態の悪い犬を一時保護して、里親を探すことにしたといいます。

滝川キャスター
「歯が全然ないですね。これは抜けていたんですか?何歳ぐらいでしょうか?」

松本貞子さん
「お医者さんに判断してもらったら、おそらく5、6歳~7歳じゃないかと言われました。 たくさん出産すると、カルシウムが溶け出してしまうんです」

このブリーダーは、必要な治療や手当てもせず、 6歳前後まで、年二回のペースで出産をさせていたといいます。

レスキューされた母犬
滝川キャスター
「産めなくなってくると、このブリーダーはどういう対応をしていたんですか?」

松本貞子さん
「10匹くらいまとめて動物愛護センターに捨てたそうです。 この子たちも、いらないグループに入っていたんですよね」

こうした劣悪な環境で産まれた子犬たちは、 日本全国から業者が集まる、犬と猫のセリ市場へと連れて行かれます。 ブリーダーの男性は子犬をここで売りさばき、利益を上げているのです。

「生後40日くらいが一番人気あるの。これが4万、6万というところかな」
(関東地方のブリーダー)

動物に関する政策提言を行っている野上ふさ子氏は、 ブリーダー業者の問題点についてこう指摘します。

「ブリーダーは誰でもなりたい人がなれます。 ブリーダーは免許制にして、それなりにきちんとした試験を受けさせるくらい厳しくしないと、 こういう悪質な業者を排除するということは難しいと思います」
(野上ふさ子氏/地球生物会議・ALIVE代表)

”子犬工場”…悪質業者の闇 母犬の命を使い捨てにして、ひたすら産ませ続ける一部のブリーダー。 ペットショップの店頭に並ぶまでに、子犬たちがどのような道を辿ってきたか。 いま、私たちが知るべき現実があります。



2009年9月23日 放送

VOL.3 すべての犬たちに安息の日々を

熊本市動物愛護センターの朝 早朝、一頭ずつ表に連れ出されていく、およそ60頭の犬たち。 秋田犬やダルメシアンなどの純血種や雑種など、 様々な種類の犬が、犬舎を清掃する間、青空の下で過ごします。 熊本市動物愛護センターの犬たちにとっては、これが日課。 こうすることで、犬の健康管理や性格などを把握することに、 役立つそうです。

センターは、新たな家族の出会いの場となる 犬や猫の『殺処分ゼロ』の方針を掲げる、熊本市。 収容している犬は、基本的に里親が見つかるまで育てあげます。 犬の譲渡会は毎週水曜日に開催、 取材した日は6頭の犬が里親を見つけることができました。

「小型犬にしようかと言っていたんですけど、 大型犬は引き取り手が少ないと聞いたものですから、 この犬に決めたんです」
(ダルメシアンの里親になった男性)

行方不明になった愛犬を探しに来た男性は、 2週間振りの対面を果たしました。
「ジョン!おまえじゃないか!」
「飼い主ですか?」とたずねる、滝川キャスター。
「13年間、飼っていて、雷のときにいなくなってしまったんです」
「怖くて逃げちゃったんですね」

10年前、熊本市の殺処分数は、およそ千頭でしたが、 取り組みの効果で今年4月以降、『殺処分数ゼロ』を続けています。

日々、動物の命と向き合っている松崎所長 「いろんな『命のカタチ』があるんですけども、 愛護センターの場合は、まだまだ生きられるのに、 人間の手で処分せんといかんというのが、やはり嫌でした」
(熊本市動物愛護センター・松崎正吉所長)

動物園の獣医だった松崎正吉所長が中心となって、 問題のある犬でも再教育で穏やかな性格に変えていくなど、 様々な努力を続けている、熊本市動物愛護センター。 飼育放棄する飼い主に対しては、厳しく指導しており、 場合によっては、引き取り拒否する姿勢で臨んできました。 こうした取り組みの一方で、 最後まで犬を飼う責任を果たさない人が今も少なくありません。

捨てられた2匹の子犬 「悪いね、いつも処分してもらって申し訳ない」 飼育放棄の犬猫を引き取る動物愛護センターのトラックに、 孫娘を連れた初老の男性が、二匹の子犬を持ち込んできました。 「もう面倒は見られないということ。可哀想だけど、あはは、もうしょうがない」 脅えているのか、震えが止まらない子犬は、まだ生後二ヵ月。 男性は悪びれもせず、一匹につき2千円の手数料を払うと、 振り向きもせずに去っていきました。

飼育放棄され、殺処分を待つ犬たち

別の男性が持ち込んだ、猟犬のセッター。 大きな腫瘍ができているのに、満足な治療を受けられず苦しんでいました。 洋服を着せられたまま捨てられたシーズーは、 飼われて10年目でした。 ダンボール箱の中で身を寄せ合う、 生まれて間もない5匹の子犬たち。 こうして捨てられた犬には、 残酷な運命が待ち受けています。

全国各地の動物愛護センターに、 次々と持ち込まれてくる飼育放棄の犬たち。 迷い犬として保護したまま、 飼い主が現れないケースも少なくありません。 こうした無責任な飼い主を減らしたいという思いから、 ある動物愛護センターが取材に応じてくれました。 

薄暗い檻の中で、殺処分を待つのは、 幼い子犬から白内障の老犬まで様々。 大半が首輪をつけたままの、飼われていた犬たちです。 雑種に混じって、人気のあったゴールデンレトリバーや、 まだ若いシェパード、ビーグルなどの純血種もいました。 収容期間は自治体によって異なり、 センターによっては、一日以内に殺処分する施設もあります。

殺処分される直前、見つめる犬 ”その時”を迎えると、犬たちは可動式の柵で檻から押し出されて、 ステンレス製のケースに追い込まれていきます。 1.5メートル四方程度の狭い空間に、20頭あまりの犬がひしめき合い、 ケースは冷たい反響音と共に密閉されます。 小さな窓から見え隠れする、不安そうな犬たちの眼差し。

苦しんで死んでいく犬たち センター職員がスイッチを押すと、 ステンレスケースの中へ音を立てて流れ込む、二酸化炭素ガス。 その直後、ケース内は呼吸ができない状態へと変わります。 苦しみで、激しく暴れだす犬たち。 ステンレスケースに響く、ぶつかりあう鈍い音。 緊張感が一気に高まったかと思うと、数分後、 命の終わりを知らせるような静寂が訪れました。 曇ってしまった、ステンレスケースの窓。 監視モニターには、 折り重なるように倒れた犬たちの姿。

現在、日本で年間30万頭を超える犬猫が、殺処分されています。

翻弄される小さな命 問われる「命の現場」 「ご覧いただいたような殺処分は、 毎日のように日本のどこかの動物愛護センターで行われています。 ペットブームの裏側にある現実です。 短い生涯の初まりから、人間の都合に翻弄される、小さな命。 その命を大きな懐で救ってあげられるのは、私たち人間だけです。 命の現場から決して目を逸らすことなく、 小さな命と向き合っていきたいと思います」

滝川クリステル




Webページへ編集した者より

手元に持っていたデータは Vol.3 の最終話だけでしたが、タイトルで検索してみたら Vol.1 と2のURLも発見できました。 リンク先の動画はYouTubeによって削除されおり 視聴不能でしたが、幸いなことに Wayback Machine へ当時のページが保存されてました。

該当部分より動画をダウンロードして復元した Vol.1

ウェイバックマシンの運営元である Internet Archive はさすがです。
しかし、ユーチューブは社会的意義の高い動画や、大勢の人が知るべき現実の記録された映像も無闇に消すようになってしまいました。 かつては画質の良いものが3つとも視聴できたのに、今あるのはテレビ画面をカメラで録画した見づらい映像のみです。

命の現場②

YouTube: http://www.youtube.com/watch?v=-kAwKN7B4NI
この動画が削除を免れたのは、画質が荒すぎてホームムービー扱いされたか、あるいはタイトルが短かかったので検索に()らず 生き残ったのでしょう。

時代のカルテ —命の現場—」を見て、ペットショップや悪徳ブリーダーに憤りを覚えた人や 殺処分の残酷さを知った方は大勢いたでしょうし、私もその一人です。 これらは決してネットから消えてはならない映像であり、時代の記録として後世へ伝える意義のあるものだと思います。

インターネット・アーカイブはWikipediaと並んでネットの図書館や資料室、公文書館ともいうべき立ち位置です。 多くの書籍をデジタル化して保存する事業にも取り組んでおり、様々な出版社や版権に関する法的な問題とも戦っています。 将来世代への遺産を守るために活動している素晴らしい人々です。 僕は Wikimedia財団MozillaInternet Archive へ毎月の定額寄付をしていますが、もっとも額が多いのはインターネット・アーカイブです。 それほど有益な事業だと確信しております。

まだ操作画面が日本語未対応なので最初はアップロードに手こずりますが、貴重なデータを守るにはうってつけのサイトです。 もう二度と消されたり視聴不能にされぬよう、がんばって3話ともアップしました。

時代のカルテ —命の現場— Vol.1

時代のカルテ —命の現場— Vol.

ショーケースの子犬は夢をみるか

https://archive.org/details/jidai_no_chart_inochi1


時代のカルテ —命の現場— Vol.2

時代のカルテ —命の現場— Vol.

子犬が産まれる場所

https://archive.org/details/jidai_no_chart_inochi2


時代のカルテ —命の現場— Vol.3

時代のカルテ —命の現場— Vol.

すべての犬に安息の日々を

https://archive.org/details/jidai_no_chart_inochi


実は、このページにある文章や画像は全部フジテレビのWebサイトからコピーしました。
オリジナルのページもとっくの昔にリンク切れで閲覧不能にされたので、ここに載せたものは全て捨てられたコンテンツなのです。 ようするにウェイバックマシンよりデータを拾って復元した、再生紙ならぬ 再生Webページ
「404」から「ルネサンス」へ
処罰の対象...? 上等だよ


犬や猫を使い捨てにするなんて言語道断ですが、
映像や資料やデータも同じく大切に扱うべきでしょう。

歴史が残らなければ 人は過去から失敗を学べないのですから...


2023.04.20 追伸





追伸2 —2023.04.22

この動画が初めて放送された当時の舞台裏を、ニュースキャスターの滝川クリステルさんが語った記事を発見しました。

※元の掲載サイトで読みたい場合は右下のURLをクリック


滝川クリステルさんインタビュー 前編

滝川クリステルさん インタビュー 前編

「ペットビジネスの裏にある、動物殺処分の現実を知ってほしい」

2016.04.07 掲載
https://p-dress.jp/articles/1638

滝川クリステルさんインタビュー 後編

後編

「シェルターで犬1匹を引き取るのは、犬2匹を助けることでもある」

2016.04.11 掲載
https://p-dress.jp/articles/1639

テレビを全く見ないので、有名人や芸能関連の話題には(うと)いのですが、殺処分問題に取り組んでいる彼女の名前は耳にしてました。 しかし、専属契約でキャスターをやっていた時代に、ここまでの大活躍をしていたとは驚きです。 この番組が放送実現へ至った経緯に関しても、滝川さんの尽力(じんりょく)が一役も二役も買っているのは間違いありません。


『ニュースJAPAN』(フジテレビ系)のメインキャスターをしていた2005年頃のことでしょうか、当時は報道センターで資料に目を通すのが日課でした。 あるときそこで、1冊の雑誌の表紙に引きつけられたのです。 それは6匹ほどのレスキューした犬を連れて満面の笑みを浮かべる女性で、犬を保護するシェルターのオーナーだとありました。

シェルター? 何のための? と調べると、当時は年間30万匹以上もの数の犬猫が殺処分にあっているということがわかったのです。 この現実に衝撃を受け、大量生産・大量消費という社会の裏側で起こっているこのような事実が、世間には見えていない、そして自分も見ようとしていなかったことに、何とかしなければと思ったのが最初です。

まず、自分にできるのは、テレビというメディアを通して多くの人に知ってもらうことだと考え、表紙に掲載されていた女性の運営シェルターなどを紹介しながら取材を重ね、番組を卒業する直前の2009年、3夜連続で『時代のカルテ 命の現場』として報道したのです。

DRESS(p-dress.jp) 2016.04.07
https://p-dress.jp/articles/1638



C型肝炎のスクープなどで知られる敏腕の番組ディレクターを説得し、徹底して掘り下げた取材で痛ましい殺処分の映像を流したのはテレビでは初のことでした。

殺処分のときに犬や猫が入れられる箱は「ドリームボックス」と呼ばれているんです。 しかし、彼らは夢を見ることもなく、二酸化炭素を注入されて苦しんで死んでいきます。 それは目を背けたくなるような映像でもあり、批判も覚悟の上でしたが、放映直後から多くのメールが寄せられ、その8割は「こんな現実は知らなかった。よく見せてくれた」という肯定的なご意見でした。

結果的にC型肝炎の報道に次ぐ大きな反響となったんです。

DRESS 2016.04.07 「犬猫殺処分のリアルな報道はテレビ初だった」
https://p-dress.jp/articles/1639

記事を読んでいくと、どうやら殺処分シーンを含めたリアルな報道は「時代のカルテ —命の現場—」が最初だったようです。 ここまで()ぎ着けて取材をした滝川さん、番組ディレクターや当時のスタッフの方々は素晴らしい仕事をしたと思います。

テレビにもネットにも言えることですが、コンテンツのクオリティーを決定するのは、メディアの形式や場所、ジャンルやブランドではなく、最終的には「人の質」なのだなぁ、と考えさせられました。 私は発表の場所としてインターネットを使っておりますが、この世界も人間の品質が落ちれば落ちるほど、かつての自分が「テレビはバカが見るものさ」と見下したように、「ネットはアホがやるものだ」と見下されるのでしょう。

このページがあなたにとって有益でありますように。
未来のネットは役立つ情報で溢れてますように!

2023.04.22 追伸





初版 2023.03.29